17＜オッズ＞

＜オッズ＞

再び鳴り響くゴングと同時に、お祭り気分の魔物達が騒ぎだす。

「オデは人間ガ勝っ方飯１ダ」

「オイは蜘蛛に飯３ダ」

「飯５、ニンゲンダロ」

「飯５クモ勝ツ」

必死に闘う人の気も知らず、魔物達は各々好き勝手に賭けだし。

「ニンゲン死ネ」

「クモ殺セ」と自分都合で、品性の欠片も無い応援を始めている。

前戦が以外と接戦だったからか、怒声のような声援はほぼ半々に分かれていた。

オッズどうとか騒ぎ正に狂喜の祭りと化しているが、実際に闘うコッチは其れどころじゃない。

どう見ても蜘蛛なのは間違いないが、デカさが猫位は在るから気持ち悪さも尋常じゃない。

左右にカサカサと思っていたよりも速く動く何本もの足が、気持ち悪さを倍増させている。

取り敢えず蜘蛛からの攻撃で予想出来る糸と、特に要注意は毒だ。

身動き出来なくなる糸が危険なのは云うまでもないが、もしも毒を使うような奴ならくらえば死亡確定だろう。

なぜなら上手く蜘蛛に勝てたとしても、解毒出来ないから結果死ぬしかない。

取り敢えず手に入れた能力の＜超音波探索＞を使って、回避する確率を上げて。

＜角創成＞で右拳に角創成する。

ＭＰの消費量を気にしてる場合じゃないから、此れで迎撃準備完了だ。

蜘蛛は左右にカサカサと動きながらも、鋭い視線が攻撃の隙を窺っている様に見える。

右拳の角を警戒してなのか、蜘蛛は少し下がり。

俺が一息吐いた瞬間、すかさず糸を射出してきた。

其の糸をギリギリ避けれたと思ったが、顔に毒らしき液体が掛かる。

しまった。蜘蛛は糸と毒をほぼ同時に出していたのか。

だが悲観している暇は無い。

毒液まみれのまま蜘蛛に右拳の角を食らわし、戦闘不能にする。

賭けに勝って喜ぶ魔物に紛れ勝利の雄叫びを上げたい位の気分だが、まだ油断は出来ない。

今は体調に異変を感じないから、即効性の神経異状や精神異状の毒ではなさそうだが。

遅効性なら、どんな毒をくらったのか解らない。

其れに、どうせ次の魔物が出て来るんだろ。

右拳の角と超音波も出したまま、そんな事を考えていると胸に突然激痛が走る。

焦りながらステータス確認すると、ＬＶが上がり回復したＨＰが数分置きに減っていく。

ヤバい。継続的にＨＰが減る遅効性だ。

そんな状況にも関わらず、頭に機械的な声が響く。

ポイズンスパイダー［能力擬態］の条件が整いました。

＜粘糸＞＜微毒＞を取得しました。

有り難いが、今はそれどころじゃない。

動揺を抑える間も無く。

またもや向こう正面から骸骨兵が出て来て、今度はミノタウロスが現れた。

ミノタウロスを繋ぐ鎖を四体の骸骨兵が握っているが、引き摺られているので全く抑制なんて出来ていない。

そのまま暴れながら前進してくるミノタウロスの全身は、どう見ても俺の倍以上。

多少スキルが増えたところで、勝てる訳がなかった。

賭ける時間も持たないと思っているのか、まだゴングも鳴っていないのに魔物達が声を上げ賭け始め。

「オデは人間ぶっ飛び死に飯１０ダ」

「オイはニンゲン即死に飯１０ダ」

「飯１０、ミノタウロス一撃勝チダロ」

普通なら有り得ない賭けを終えた魔物達は、瞬く間にミノタウロスコール始める。

此れがワンサイドゲームというやつか。

死に方に賭けてんじゃねーよ。

オッズが成立してねーだろ。

心の叫び虚しく。

一方的なゴングが鳴り響く。