雨実 和兎の小説創作奮闘ブログ

エッセイ・小説・詩・ポエム

23<期待値>

<期待値>

門番の骸骨兵四体に気付かれないように、城近くの死角に移動したガルのメンバー三人。

 

ルミニーの合図でリジョンは岩石魔法を上空から城に複数投下、其れに拠り空いた壁の穴から三人は侵入。

 

リジョンの岩石魔法に依り城は何処崩壊していて、骸骨兵達は何処から攻めて来たのか絞れなくなり。

 

門番の骸骨兵四体は何が起きたのか理解出来ず、右往左往している。

 

ルミニーの宣言通り、救出作戦は派手に開始されたのだった。

 

門番が動揺している隙にリジョンは索敵魔法を展開。

索敵範囲で敵の少ないルートを選び、三人は城の内部に向かって駆けて行く。

 

何体かの骸骨兵とは遭遇するが、三人は立ち止まらず駆け続け親玉を探す。

 

骸骨兵は使役系の魔法である可能性が高く、親玉を倒せば動かなくなると予想していたからだった。

 

「結局、骸骨ばかりじゃボスも期待出来ないね」

 

ルミニーがつまらなさそうに遭遇した骸骨兵を切り倒していると、リジョンが慌て叫ぶ。

 

「迂回しましょう。左側から大量の魔物反応が出ています」

 

リジョンが焦るのも無理はなかった。

反応が有った魔物達の魔力量はバラバラで、骸骨兵だけの可能性は低く。

まるでダンジョンのモンスターハウスを開放したかの様な、異常な数だったからである。

 

「面白くなってきたじゃない」

 

そんなピンチをルミニーは楽しんでいる様子だが、先導するリジョンは必死の形相で返事をする余裕も無い。

 

其の大群に巻き込まれたら、全滅するのは確実だったからだ。

 

なんとか大群を回避して城内に潜り込んだが、以外だったのは大群の魔物達が散り散りに城から去って行った事だった。

 

攻めて来た自分達を狙って大群を開放したなら、そんな事は有り得ない。

 

「危なかったな・・・・・・」

 

息を切らしながらルドエルが呟き。

城内から窓越しに眺めたる三人は、ほっと胸を撫で下ろす。

 

理由は解らないが、絶対絶命のピンチから助かったのは間違いなく。

 

其れが最初の岩石魔法で崩れた壁から、囚人の魔物達が逃げたからだとは思いもしていなかった。

 

安心していたのも束の間。

城内にも見廻りの骸骨兵が居て、一息つく間も無く戦闘が始まる。

 

「本当に切りがないね」

 

もうルミニーは数えきれない程の骸骨を切り倒したが、其れでも骸骨は増えていく。

 

「上に一体、強力な魔物反応有ります」

 

「そいつがボスだね、コイツら放っといて行くよ」

 

リジョンの言葉に反応して、ルミニーは骸骨を斬り倒し通り道を確保。

追って来る骸骨兵をルドエルとリジョンが倒しながら、ルミニーの後を追う。

八体の骸骨兵が一行の後を追って来ているが、三人は構わず走り続ける。

 

「その左奥の部屋です」

 

リジョンの指し示す部屋に駆け込むと、不思議な事に追って来ていた骸骨兵達は部屋に入ってこない。

 

その意味は中央の高貴な椅子に鎮座する、黒いローブを纏った骸骨を視れば一目瞭然だった。

 

「あんたが此処のボスだね」

 

先頭に立ちルミニーは身構えるが、ボスは人間等意に介していないのか立ち上がろうともしない。

 

「我の城に人間とは久しいな、我が此処の主グレン・ルーファスである」

 

三人は敵意を顕に構えているが、懐かし気に話す魔王は座ったままで応戦しようともしない。

 

「生憎だけどノンビリ話してる暇は無いんだよ」

 

魔王に斬り掛かろうと駆け出したルミニーが、魔王の手前で横飛びし叫ぶ。

 

「今だよ撃ちな」

 

ルミニーの合図で、待ち構えていたリジョンが自身最大の炎系爆裂魔法を放つ。

 

魔王を倒し骸骨兵が居なくなれば捜索は出来ると、残魔力の事すら考慮していない攻撃だった。

 

凄まじい爆発音が響き三人は勝利を確信していたが、晴れてきた煙の中から現れた魔王には服にすら傷も無く。

 

「人間よ、我に魔法など効かぬぞ」

 

そう言い放ち、高らかに笑っている。

 

「そんなはずは・・・・・・」

 

思わずリジョンが呟き、三人は茫然としその場に立ち止まる。

全く効かない程に強いなんて事は誰も想定していなかった。

 

「コレは期待以上かもしれないね・・・・・・」

 

逸早く我に帰ったルミニーも、そう認めざるを得なかった。

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