雨実 和兎の小説創作奮闘ブログ

エッセイ・小説・詩・ポエム

27<メインクエスト>

<メインクエスト>

配下が邪魔者ばかりだという事は解った。

だがコイツらに此れ以上、自由に動き回られると俺の自由が奪われてしまう。

 

俺のメインクエストを叶える為にも、どうにかしなければ。

少し考え、俺はゴブリンに指示を出す。

 

「配下を全員集めてくれ、今から重要な話しをする」

 

移動して5分後。玉座にて待っていると、昨日と同じ顔ぶれにネズが加わり立ち並ぶ。

 

一同は、静かに俺の発言を待っている。

 

「改革だ。我は考えたのだが、今日から配下の役職を決めようと思う」

 

改革という如何にも魔王っぽい言葉が効いたのか、配下達に歓声が上がる。

 

「先ずは城の防衛隊長ガオン。防衛隊はゴブリンだ。壊れた城の補修と防衛をゴブリンと進めてくれ」

 

「はい、命懸けでやらせて頂きます」

 

深々と頭を下げるゴブリン。

コイツの社畜度は、命が幾つ有っても足りないな。

 

対称的にガオンは頭を下げた後に、指の骨をバキバキと鳴らし。

 

「城の修理が終わったら、又闘いましょう」と忠誠心の欠片も無い不吉な笑顔を見せる。

 

「考えておこう・・・・・・」

 

コイツは本当に配下なのか? 

もう只の時間稼ぎだが、当分はコレで誤魔化し其の間に俺が強くなるしかない。

 

出来れば攻めて来た敵で満足して、闘いたいと言わなくなるのが理想だが。

 

「次はネズが我の秘書を頼む」

 

「光栄です、本当に震えちゃいますわ」

 

犬歯をカチカチと鳴らし、ネズが頭を下げたと同時にヨダレが床に落ちている。

 

コイツは忠誠心より、本能が勝っていないか? 不安だが他に役職が思いつかないので仕方ない。

 

「次はウスロスが参謀だ」

 

「有り難き幸せ、光栄でございます」

 

一礼をする丁寧な動作や言葉とは裏腹に、ウスロスの表情は不気味に笑っている。

 

コイツだけは絶対に信じられないが、何の役も与えないと後が怖い。

なので何をしていても咎める必要の少ない役で、自由にしておくしかない。

 

「次はエミリだが我の食事を作ってもらおう。人間の食に興味が有るのでな。トウはエミリの護衛だ。此処は人間が住むには危ないからな」

 

「解りました」

 

料理だと聞き安心したのか、エミリは笑顔で頭を下げ。

 

トウも「了解した」と頭を下げる。

其れと同時にウスロスが、ニヤついた顔で喋りだす。

 

「クク、其れは妙ですな。人間の食べ物に興味ですか・・・・・・」

 

ウスロスの白々しい疑問に、骸骨の身体で無いはずの鼓動が早まる。

もしかして骸骨姿の魔王は食べないのか?

 

焦っているからか、良い言い訳が思いつかない。

もう勢いで誤魔化すしかない。

 

「改革だからだ!!」

 

「なるほど・・・・・・、流石は魔王樣」

 

わざと試したで在ろう証拠に、ウスロスの顔はやはりニヤついている。

此れなら、もう改革と言っておけば何でも大丈夫な気がしてきた。

 

其れにしても早速邪魔して楽しんでやがるな。

コイツだけは本当に信用出来ない。

早く強くならないと、エミリにも被害が及びそうだ。

 

其の為にも次の一言が重要になる。

頼むからウスロス、もう邪魔するなよ。

 

「料理の材料は我が調達するので、必要な物が在ったら言ってくれ」

 

俺の言葉にエミリは笑顔を返す。

悪意の無い其の笑顔、本当に癒される。

 

好きだ。間違いない。

ずっと見ていたいし、もっと話したいが不気味がられるから今は我慢だ。

 

配下達の邪魔さえ無ければ、直ぐに人間だと打ち明け。

もっと仲良くなりたいが、此の状況では難しいかもしれない。

 

折角異世界に来て、こんなに好きになれる相手に巡り逢ったのに不憫すぎる。

 

言ってみればエミリと付き合うようになるのが、俺のメインクエストなのだから。

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