31<魔王の狩り>
31<魔王の狩り>
「実際料理なんて出来るのか?」
自分の記憶ではエミリが料理しているのは、そんなに見た事が無い。
其れに食料を魔王が調達すると云っているのだから、とんでもなくデカイ魔物を渡される可能性も在る。
「簡単なので良いなら大丈夫かも・・・・・・」
自信満々という訳ではなさそうなので、取り敢えず厨房を見ててみる事になった。
「本当に大丈夫なのか? 試しに断ってみても良いんだぞ」
「カレーとかシチューだって作った事あるもん」
そういう意味で聞いた訳ではないが、やる気は在るようなので応援しよう。
この鳥の姿では、大して手伝う事も出来ないしな。
不満そうに膨れっ面していたエミリだが、厨房に着くと其の表情は一変した。
鍋やフライパンのような調理器具は揃っていたので安心したが、そんな事よりも兎に角汚い。
何を調理したらこうなるんだという位に散らかしたままで、ヘドロのような物体が辺り一面に飛び散っている。
「・・・・・・此れは大仕事だな、頑張れよ」
エミリは親の敵でも見るかのような目で見てくるが、目の前に居る鳥が親である。
諦めた様子でエミリは片付けを始め、黙々と作業を進めていく。
勿論自分も手伝いはしたが、何せ鳥の姿だから拭き掃除のみである。
昼食は魔王が出掛けているので、自分達だけ魔王城に来る前に準備していた食料を食べ。
再びひたすら掃除を続け綺麗になった頃には、エミリは早朝のゴブリンと同じように疲れきった顔をしている。
「綺麗になってスッキリしたね」
エミリは満足そうに、清掃され片付いた厨房を見渡している。
「元から汚かったんだし、こんなに頑張らなくても良かったんじゃないか?」
「お城に住ましてもらってるから、コレ位は頑張らなくちゃ」
「なるほどな」
お城と言っても魔王城だが、其れは言わない方が良いだろう。
天蓋付きのベッドが良かったのか、まぁ思っていたよりも気に入っているようで良かった。
掃除している間に時々コボルトが通り過ぎながら睨んでいたのが気になったが、何かしてこない限りは気にしない方が良いだろう。
「魔王様遅いね、そろそろ夕食の準備を始めたいけど」
「魔王と云う位だから、とんでもない獲物を狩っているんだろう。調理出来ない位に大きくなければ良いがな」
休憩がてら二人で外を眺めていると、もう太陽は沈み始め辺りはオレンジ色に変わっていく。
食料を待ち続け数十分後、厨房のドアが開く。
「待たせたな、コレが夕食の食料だ。少し少ないが我とエミリとトウの三人分にはなるだろう」
そう言って魔王がエミリに手渡したのは、食材加工済みの角兎肉2つだけだった。
「意外に少食なんですね」
そう言ってエミリが笑うと魔王は嬉しそうに「骸骨だからな」と笑い反していた。