35<二人の知らない事>
35<二人の知らない事>
町の人に連れられ、孤児院である教会に預けられたルミニー。
まだ預けられたばかりの頃は笑顔も無く、部屋の隅に一人で居る事が多かった。
そんな両親を亡くし落ち込んでいた気持ちを和らげてくれたのは、同じように両親を亡くした同世代の孤児達だった。
まだ子供だからこその遠慮の無さが、ルミニーの心を開き。
いつの間にか笑い合えるようになり、其の仲間達を兄弟と思えるようになるのも自然な事だった。
「薬草採集行ってくるよ」
シスターに挨拶して、駆け出したルミニーが向かった先は近く森。
成長したルミニーは親から授かった知識を活かし、孤児院の運営費を補っていたので重宝され自由に行動する事が出来た。
「今日は魔物も少ないね・・・・・・」
薬草採集がてら魔物狩りを繰返していたルミニーの強さは、もう低級冒険者を凌いでいて独り立ちも近い。
事件時の経験値が其れを可能にしたのは間違いなく、皮肉にもルミニーの未來はあの時決まったのだった。
だが他の孤児達は貴族に召し使いとして雇われるケースが多く、其れが幸せとなるかは行った先の貴族次第だった。
「シスター今日の収穫だよ」
森から無事戻ったルミニーがシスターに収穫を渡すと、年長組の孤児達がルミニーを囲む。
「ルミニー今日も稽古付けてくれよ」
「仕方無いね、ちょっとだけだよ」
裏庭に移動したルミニーは年長組三人相手に剣を交え、一日を終えるのが日課だった。
孤児の中には騎士を目指す者も多く。
通常なら剣を交える事など出来ない位にLVの高いルミニーは、最高の練習相手であった。
「少しは手加減しろよ」
「まだまだだね」
孤児達は大怪我こそしてないものの、ルミニーに全く剣を当てれない苛立ちから泣き言を言い始め。
そろそろ稽古を終えて夕食にしようとした頃、教会前に他の孤児達が集まる声が聞こえてきた。
「なにやら騒がしいね・・・・・・」
魔物かもしれないとルミニー達が慌てて教会前に行くと、孤児達が何かを取り囲んで泣いている。
「何が在ったんだい? 」
輪の中に入り込んだルミニーが中心に居たシスターに訊ねると、シスターは目の前に在る棺桶に視線を落とした。
棺桶の中に居る遺体はマルク、数ヶ月前迄孤児院に居てルミニーが稽古を付けていた少年だった。
「マルク、どうして・・・・・・」
言葉を無くすルミニーに、シスターの説明は届かず。
後に貴族に雇われたマルクが、貴族の遊びで在る魔物狩りに連れられ亡くなった事を理解する。
だからと云ってルミニーは、貴族を恨んでいる訳ではなく。
原因は魔物が居るからだと、より命懸けの戦いに身を投じていく事となる。
数ヶ月後。教会を出て冒険者になったルミニーは、鬼神の如く魔物を狩り続け。
無茶な連戦で死にそうな時に、リジョンとルドエルの二人に出会った。
気の合う三人がガルのチームを組むようになるには、其れほど時間は掛からなかった。
唯一チームの二人が知らないのは、ルミニーがギャンブル癖のせいで金が無い訳ではなく。
教会に募金をしていた残りで、ギャンブルをしていた事だった。