49<鼓舞>
49<鼓舞>
「だから借りても嫌だって言ったのに……」
ぼやきながらも闘技場に駆け寄るルドエルの尻を叩き、ルミニーは笑いながら鼓舞する。
「そんな冗談言ってる場合じゃないよ」
ガルの三人はルミニーとルドエル前衛二人、リジョン後衛一人に並び。
「リジョン道を塞ぎな」
ルミニーの指示で、リジョンはケルマンとラタが駆けて行った道を岩石魔法で塞ぎ。
出入り出来る場所は、キラーアントの大群が入って来る一ヵ所のみになる。
「逃げ場も無しじゃやるしかねーな」
ルドエルの叫びに呼応する様に、キラーアントの大群は三人に飛び掛かり。
前衛二人が次々とキラーアントを薙ぎ倒していき、リジョンは支援魔法で援助に徹し。
三人は闘技場の形を上手く利用して、円を描く様に移動しながら出口を目指す。
其の間も次々と増えていくキラーアントは、四方からガルのメンバーに飛び掛かっていく。
作戦を伝える余裕すら無いが、幾ら死地とはいえルミニーに全く勝算が無い訳ではなかった。
キラーアントが入りきった所を脱出して狭い出口で叩く、其れがルミニーの思い描く唯一の勝算だった。
ルミニーが作戦を口にした訳でなくても、ルミニーの進行方向から二人は作戦を読み取ってくれると信じたのである。
そしてルドエルとリジョンは見事に其れを読み取り、歩調を合わしていた。
だが予想外だったのは、出入り口から入って来るキラーアントの数だった。
途切れるタイミングを幾ら待っても、キラーアントは変わらず増え続け。
其の数が七十を超えた辺りでルミニーは目算を止め、この場所で戦い切る覚悟を決めていた。
だが戦うスペースは無くなっていき、徐々にルミニー達の体力は削られていく。
一方。上空でルミニー達の戦闘を眺めるウスロスは、寝そべり他人事の様に寛いでいた。
「ククク……、そうそう、その調子ですよ。沢山入って賑やかにしないと……」
薄気味悪く笑いながらも、闘技場でキラーアントの生体反応が減っていくと。
「オヤオヤ減ってるではないですか……、もっと頑張らないと蟻らしく」
自分のせいで戦う羽目に合うキラーアントを小馬鹿にしながら、まるで応援の様な言葉を口にし。
其れでいて寝そべったまま、全く関与する気配は無く。
ウスロスにとっての鼓舞は、からかいの一種でしかない様だった。