雨実 和兎の小説創作奮闘ブログ

エッセイ・小説・詩・ポエム

50<未熟者>

50<未熟者>

「こんな事になるなら、来る前にたらふく肉食いたかったぜ」

 

「喋ってる余裕有るなら、もっと身体動かしな」

 

戦いながらルドエルは軽口を叩くが、ルミニーの言う様な余裕は無く。

 

飛び交うキラーアントから、互いに庇い合う戦闘にも限界が来ていた。

 

避けた先にはキラーアントの爪が容赦無く振るわれ、斬った上からも次のキラーアント牙が飛び込む。

 

一個体ずつの力量はガルのメンバーが勝っていても、数の力が圧倒的に違い過ぎるので全滅するのは時間の問題だった。

 

倒したキラーアントの数が八十を超えた頃には、戦闘は一時間を過ぎ。

 

上空でルミニー達の観戦に飽きたウスロスは、そのまま眠りについていた。

 

ウスロスの邪魔が入らなくなったとはいえ、死地に変わりはなく。

 

剣を持つ手が震える程に限界の体力を精神力だけで補い、三人は戦い続けていた。

 

そんなギリギリの均衡が崩れたのは壁際迄追い込まれた後、一瞬の出来事だった。

 

足場が悪くなりよろつくリジョンをルドエルが庇い、そのままキラーアントの体当たりを食らう。

 

強く壁に頭を打ったルドエルは気を失い、その場に倒れ。

 

ルドエルに回復薬を与えようとしたリジョンも、背後からキラーアントの突撃で倒れてしまう。

 

更に追い打ちを掛ける様に、倒れた二人にキラーアントは飛び掛かる。

 

幾らルミニーが強いとは云っても、自分に襲い掛かる敵を相手しながら二人をカバーするのは不可能であり。

 

ルミニー自身も頭では無理だと理解していたが、心が其れを認めなかった。

 

届くはずのない距離だと解っていても。

其れでも二人を助けようとして、横一閃に振った剣が奇蹟を起こす。

 

剣の軌道に沿って飛んだ斬撃が、襲い掛かるキラーアント達を上下に切り分け。

 

更に其の斬撃は、背後に並んでいたキラーアントをも切り裂いた。

 

仲間を助けたいというルミニーの強き思いが剣に乗り、新しいスキル[飛剣]を手に入れた瞬間だった。

 

今の一撃で凡そ二・三十体は戦闘不能になった事で、警戒したキラーアントは飛び込めなくなっている。

 

そのまま有利な数を利用して飛び込み続ければ、キラーアントが勝つのは間違いなかった。

 

だが安易に襲えなくなった事で、戦況は一変する。

 

ルミニーが手に入れたスキルは、其れほど脅威的な攻撃力だった。

 

当然スキルで在る以上乱発は出来ないが、相手が警戒した状態なら戦いようは在った。

 

開いたスペースに駆け込み、虚実を入り混ぜながら斬っていきキラーアントの数を減らしていく。

 

キラーアント達が迂闊に仲間を襲えなくなったのも、ルミニーにとっては好都合だった。

 

とはいえ数の差は歴然。

 

戦えるのがルミニーだけになってからの戦闘は数時間に及ぶ。

 

修羅の如く剣を振り続け、最後の一匹を倒し。

 

失いかけた意識の中、ルミニーは思わず笑う。

 

「アタシもまだまだだね……、まだ強くなれるとは思ってなかったよ」

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