雨実 和兎の小説創作奮闘ブログ

エッセイ・小説・詩・ポエム

55<愉快な仲間達>

55<愉快な仲間達>

俺達、魔王一行が洞穴の外に出ると夜だった。

 

今更だが、洞穴は元々モグラの魔物が住んでいたらしい。

 

そんなジャイアントモォールという愉快な仲間が増えたが、他の奴等に比べれば害は無いだろう。

 

俺を見てもネズの様にヨダレを垂らさないし、ガオンの様に戦闘狂という事も無さそうだ。

 

なんちゃって魔王から魔王に変わるのも、そう遠くないかもしれない。

 

安心したからか何だか腹が減ったなとは思ったが、思いの外長い時間入っていたらしい。

 

そう言えば昼飯すら食べていないが、此処は異世界

 

もう面倒くさいと思っても、出前なんて頼めない。

 

せめてエミリと自分の分位は食料確保したいが、そんな事を考えているとゴブリンが話し掛けてきた。

 

「魔王様お腹空きましたよね、食事準備してきます」

 

「ありがとう、助かるよ」

 

「命懸けでやらせて貰います」

 

そう言ってゴブリンは嬉しそうに駆けて行く。

 

何て気の利く奴なんだ、唐突だったから魔王のフリすら忘れてたよ。

 

魔王じゃない事をバラシたのに、だがガオンとゴブリンの態度に変わりはない。

 

一度死んだ時に本物の魔王が出たからだろうけど、もうガオンとゴブリンの前では普通で良いか。

 

そんな事を思いながら久しぶりに見た自分は、何だかゲームの登場人物っぽく筋肉質だ。

 

此の異世界用にデフォルメされているのか、職業スキルが関係しているのか解らないが。

 

取り敢えず解ったのは、異世界転移だという事だけだな。

 

魔王城に近付いてくると、ネズが鼻先を揺らし呟く。

 

「人間臭いですわ……」

 

オイ、聞こえているぞ。

又疑い始めたのか。

 

だが俺の方には見向きもしないから、冒険者や盗賊なのかもしれない。

 

ネズに付いて行くと、理由は城の闘技場に入って解った。

 

闘技場内はキラーアントの遺体で埋め尽くされていたので、外に取り除いていき。

 

俺達が入れる位のスペースが確保されると、壁際に冒険者らしき三人を見付けた。

 

魔王という肩書きでは在るので、どうしたものかと考えているとエミリが三人に駆け寄っていた。

 

「ルミニーさん大丈夫ですか……」

 

「……? やっぱりアンタ生きてたんだね」

 

心配するエミリの声で目覚めたルミニーは、エミリの顔を見て予想していたように笑顔を返す。

 

「どうやら少し寝てしまってたみたいだよ、アンタ達も早く起きな」

 

そう言ってルミニーは気を失っていたルドエルとリジョンの肩を叩き、二人を起こす。

 

起きた二人は自分達が生きている事と、エミリに気付き二度驚いていた。

 

二人が嬉しそうにエミリを抱き寄せていると、ルミニーが口を開く。

 

「ところでエミリ、後ろに居るのは何なんだい……」

 

後ろに居るのは魔物二体と獣人、そして魔王の衣装を身に纏う俺。

 

ルミニーの鋭い視線が、そんな愉快な仲間達である俺達に刺さるのは云うまでもなかった。

 

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