雨実 和兎の小説創作奮闘ブログ

エッセイ・小説・詩・ポエム

67<黒原セトという男>

67<黒原セトという男>

時は戻り現代。

 

父親が教師の家庭に産まれた黒原セトは、周りから普通の子供と認識されていた。

 

特に勉強やスポーツが出来るでもなく、クラスで目立つでもない。

 

家庭も特別裕福でも貧乏でもなく、家族仲が悪い訳でもない。

 

強いて違う所を挙げるなら、黒原家の中で父親の発言は絶対で在る事だった。

 

「興味が人を造る」

 

此れが父親の教育論的な口癖だったが、子供が親の望むような事に興味を示すとは限らなく。

 

父親が息子の興味が普通の子供とは違うと知ったのは、セトが中学生になった頃のふとした事が切っ掛けだった。

 

黒原家では家族共有で使っているPCが在るのだが、めったに夫婦が使う事は無く。

 

実質使っているのはセトのみだったのだが、この日は違っていた。

 

珍しく仕事を持ち帰った父親がPCでの作業を済ませ、思い付いたまま検索履歴を辿る。

 

息子の興味が気になったのだろうが、其れは知らない方が良かったと云える内容だった。

 

検索は爆弾や毒ガスの作り方や効果、被害者の凄惨な画像や動画。

 

凡そ普通の精神を持った人間なら、眼を背けたくなるような物ばかりだった。

 

だからと云って、気付いた父親が息子に問いただす事はしなかった。

 

反発心を煽る可能性を考慮したら、知っているのを隠すしかなかったのだが。

 

其の日から、父親は何かと息子を外に連れ出すようになり。

 

映画や美術館。

ライブや神社と有りとあらゆる所に行ったが、結果息子は知られた事に感付き。

 

自分の凶悪な興味を、隠すのが上手くなっていくのだった。

 

隠せば隠す程に膨れ上がっていった狂気は、現実の生き物に向けられていき。

 

最初は小さなネズミを罠に掛け、毒を微量に混ぜた餌を食わせ観察。

 

そうして少しずつ、与える毒の量を増やしていく。

 

増やし過ぎると喰わない事もあったが、其れも含めてネズミの反応を楽しんでいたのだ。

 

泡を吐き、震えて倒れるネズミの姿を観て。

 

少し調べれば、毒の入手が簡単だったのも行動を加速させた。

 

現代何処にでも売っている物の中に、毒は潜み溢れている。

 

一匹死んだら、また罠で捕まえ次の一匹。

 

もう一匹死んだら、また罠で捕まえ次の一匹。

 

殺したネズミが二桁になると、更に大きな生き物に変わっていく。

 

最初は猫、次は犬。

 

其の対象が人に代わるのは、時間の問題だった。

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