雨実 和兎の小説創作奮闘ブログ

エッセイ・小説・詩・ポエム

12<B級上位>

<B級上位>

保存食や野営の準備を済ました翌日。

 

「ウチはリーダーのルミニーでコッチの魔法使いはリジョン、で剣士のコイツはルドエル。チーム名はガルって言うんだけど、これでもB級上位のパーティーだからね」

 

「宜しくお願いします」

 

恭しくエミリが頭を下げると、ルミニーはエミリの肩に手を置き。

 

「任しときな、必ず届けてあげるよ」と頼もしい言葉を掛ける。

 

待ち合わせ場所での自己紹介も終り、一行は馬車に乗り込み魔王城近くの沼に向かう。

 

鋪装されていない道とサスペンションも無く、タイヤが木造な馬車内部はとにかく跳ねて。

継続的に突き上げる衝撃が体力を奪う。

現代での車移動に比べてしまうと馬車の乗り心地は最悪だが、慣れているのかガルのメンバーは平然としていた。

 

「馬車の操縦出来るなんて凄いな」

 

冒険者スキルだよ、こんなの冒険者なら誰でも出来るようになるよ」

 

疑問を投げ掛けると、馬車を操縦するルミニーは軽い口調で答える。

勉強不足だったが、どうやら職業で獲られるスキルも有るらしい。

 

「ウチらは報酬さえ貰えれば何でも良いんだけど、あんな沼に何の用があるんだい?」

 

「運命の人に会えるって占い師のお婆さんから聞いて」

 

ルミニーの質問に答えるエミリは恥ずかしそうに視線を落とす。

 

「そんな理由で~!? まあ魔王城に行けって訳じゃないから良いけど、オカシな娘だね」

 

笑い飛ばすルミニーは、どうやら色恋沙汰には興味が無いらしい。

 

「目的地は、そんなに危ない所なのか?」

 

「沼より奥に行ったら骸骨兵がウジャウジャ要るって噂だよ」

 

念の為聞いてみたが、思っていたよりも危なそうである。

 

こんな調子で雑談をする間も馬車は走り続けて、二時間が経とうとしていた頃。

 

「ここからは通行止めだぜ~」

 

馬に乗った盗賊らしき四人組が横路から突然現れ、馬車は急停止させられる。

 

「護衛に男が一人だけって楽勝だな~、オラ!さっさと金目の物全部出せ~」

 

「そのあとは、お楽しみのパーリーィーだぜ~」

 

馬上から盗賊達の下品な叫び声と笑い声が響く。

馬車内で怯えるエミリの前に出るが、こんな状況は想定していなかった。

 

魔物ならスキルが有るから問題無いが、人間相手ではエミリのスキルは発動しない。

もしも死んでしまったら、現実で寝たきりなエミリが此の世界に戻ってこれるか解らない。

護衛がB級上位で大丈夫なのか、そんな不安が頭を過る。

 

どんな手を使っても守らなければ。

そんな事を考えていた時。

 

其の様子を見ていたガルのメンバーは、やれやれといった感じで顔を見合わせている。

 

「一人で倒せるか賭けようか」

 

ルミニーはメンバーに笑い掛けるが、二人は面倒くさそうに片手を振って相手にもしない。

 

「つまんないね-、チョット待ってな」

 

そう言って一人馬車を降りたルミニーは、盗賊達の前に立ちはだかる。

 

「四人じゃ準備運動にもならなさそうだけど、ちょうど暇だったしね。かかってきな」

 

「ずいぶん余裕だな~」

 

「後が楽しみだぜ~」

 

馬から降りた四人は、ニタニタと笑いながらルミニーを取り囲む。

 

「ルミニーさん一人だけで行って大丈夫なんですか?」

 

「あの人数なら全然問題ないよ、実力は勇者クラスだからね。ギャンブル狂じゃなければチームもA級に認められるんだけどな・・・・・・」

 

諦めたように笑って答えるルドエルは、気にもせず剣の手入れを始めている。

 

数撃のやり取りで盗賊二人の剣は遠くに飛ばされ、盗賊達は驚いた顔を見合わせる。

たじろいでいる残りの二人は後退り、今にも逃げて行きそうだ。

ルミニーがスキルを使った様子もなく、盗賊達との実力差は明白だった。

 

「まだやるかい、次は斬るよ」

 

楽しそうに素振りを始めるルミニーを見る余裕も無く、盗賊達は馬に乗り走り去って行く。

 

「捨て台詞も無しかよ、まだまだだね」

 

そう言って馬車に乗り込むルミニーの強さは、正に勇者クラスだった。

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