雨実 和兎の小説創作奮闘ブログ

エッセイ・小説・詩・ポエム

「煌めき」2

「煌めき」2 二人は乗り物から少し離れた場所に有るベンチに座っていたから、 まだ飛行機に乗って何も知らない子供達は楽しそうに手を振り笑っている。 君は答えを求めるように子供達の方を見つめた後、少しだけ考えさして下さいと言い。 「返事は何時でも良…

「煌めき」1

「煌めき」1 気を使われるよりも甘えてほしい。 生きていた頃の生活は、そんな自分の想いとは裏腹な出来事の方が多かった。 夜勤明けで眠たいだろうからだとか、眠るのが遅いからだとか。 わざわざネットで調べた早寝をする知識を丁寧に教えてくれたり。 冷…

「オハヨウとオヤスミ」2

「オハヨウとオヤスミ」2 今住んでいる場所からはそれほど遠くはないし、子供との仲も悪くはない。 時々預けている事を思えば自分は良いんじゃないかと思ったが、君にはそう思えなかったらしい。 「子供を転校させたくないから」そう言って断る君の考えは何…

「オハヨウとオヤスミ」1

「オハヨウとオヤスミ」1 もう伝わる事の無いおやすみとおはようを何度繰り返しただろう。 恋の始まりが興味で愛が分かち合う理解だとすれば、会話をないがしろに出来ないのは自分だけではない。 朝から交わす事の出来ない会話が、いやが上にも身体の無い自…

「新しい玩具と箱」2

「新しい玩具と箱」2 何か善からぬ事に巻き込まれやしないかと、胸一杯の不安を抑え込み兄の住むマンションに向かう。 何処にでも在るようなワンルームの一室に入り、室内には兄と兄の兄貴がそれぞれ彼女付きで迎えてくれた。 やっぱり兄弟やから似てるなな…

「新しい玩具と箱」1

「新しい玩具と箱」1 形在るものは全て壊れる。 誰もが知っている事で其れは疑いようも無い事実だろう。 其れでも何か残してあげたかったと想うのは、今の自分がこんな姿だからかもしれない。 思い返せば高級な玩具も買ってあげた事は無いし、特別にお金の掛…

「教室と青空」2

「教室と青空」2 自分が中学生なったばかりの頃に知り合った先輩達は怖い人ばかりだったが、 お調子者な其の先輩は怖いというよりは軽い感じの人で在り。 グループの中でもどちらかと言えば弱く、馬鹿にされているようなタイプだった。 其れよりも馬鹿な自分…

「教室と青空」1

「教室と青空」1 もう伝えられないからかもしれないが、もっと真面目な話しをしておけばよかったと思う。 自分が生きていた頃は親の言う事なんて聞かないと思っていたから、 言わなければいけない事も口にはしなかった。 自分が知っている限りでは子供は親と…

「入学式とビデオ」2

「入学式とビデオ」2 面会には一度も行っていない。 母親と姉は会いに行ったらしいが、自分には会って話す事も思い付かない。 兄貴自体がそんな事を求めるような人間ではないと思っていたし、其の時の自分には必要性を感じられなかった。 だが出所してから笑…

「入学式とビデオ」1

「入学式とビデオ」1 一体何から卒業したいのか解らないのに速く大人になりたかったのは、 きっと環境から抑圧されている事に幼いながらも気づいていたからだと思う。 他人はどうか知らないが自分が子供の頃は間違いなくそうで、 其れは自分よりも先に生まれ…

「告白とアルバム」2

「告白とアルバム」2 偶然という意味では多少はそうなのかもしれないと思えるのは、 互いに地元ではなく知らない土地に出た先で出会ったという事位で。 付き合っている人が仲間の一人だという時点で、恋愛対象とは考えられない。 だからこそ君には何でも話せ…

「告白とアルバム」1

「告白とアルバム」1 君と二人で写った写真は少ない。 思い出というのは心に残すものだと思っていたし、互いに手を繋ぐ事すら恥ずかしがるような人だから。 照れた写真写りを気にして、まあ良いかと気にもしていなかった。 君と初めて出逢ったのは17才の時…

「宿題と一歩」2

「宿題と一歩」2 行き先を告げられないまま児童相談所という聞き馴染みのない場所に連れて行かれたのは、 家出から帰って数日後の事だった。 警察署に行方不明の届け出を取り下げに行った後の事だが、母さんは理由も聞かず全く自分を攻めなかった。 もちろん…

「宿題と一歩」1

「宿題と一歩」1 知らない間に出来ることが増え成長していく子供達にとって自分の影響力なんて些細なもので、 君にとっても其れは同じようなものだったのかもしれない。 自分が生きていた頃は家事を手伝う事なんて殆ど無かった。 稀に君から用事を頼まれるよ…

「アイデンティティー」3

「アイデンティティー」3 数日後。 いつものように夕方迄働き、仕事を辞めた俺は先輩夫婦に給料袋を手渡し今日迄のお礼を告げた。 「あんたが働いて得たお金なんやから、そんな気使わんでいいのに」 「他の仕事探して、そのままおればええやん」と先輩夫婦は…

「アイデンティティー」2

「アイデンティティー」2 何一つ関わりたくない状況だが、これはチャンスだと思った。 先輩の家を出た自分は言われたとおりの場所に迎えに行き、其の子に洗いざらい打ち明けた。 そんな事を本当にするかどうか解らない事も付け加えて。 どんな説明をしても最…

「アイデンティティー」1

「アイデンティティー」1 ことわざこそが其の国のアイデンティティーで在り、歴史そのものだと思う。 可愛い子には旅させよとか若い頃の苦労は買ってでもしろとか言うが、 同じ経験をしても同じように学び感じるとは限らない。 だが其れでも言い伝えられる大…

「親不孝とライオン」2

「親不孝とライオン」2 そんな後ろ向きな気持ちを書き消すように、 せめて今まで出来なかった事をしようと保育園に娘の様子を見に行った。 生きていた頃に行った保育園の参観日では、子供達が普段は仲良く出来ているのか。 其れを知りたくてわざと遠巻きに眺…

「親不孝とライオン」1

「親不孝とライオン」1 何故自分は此所に住んでいて、自分には両親が居ないのだろう。 まだ小学生にすらならない自分が小さい頃の記憶。 一緒に暮らしていた同世代の子供が遊び飽きた三輪車に乗り、大人に怒られた時に感じた疑問だった。 其の子が親から買っ…

「オバケの代償」2

「オバケの代償」2 そこまで話すと自分が受け止めるのを待つように、姉は何も語らない。 まるで時間が止まったかのように、車道を走る車のエンジン音や通行人が楽しそうに会話する笑い声が響く。 そんな街の喧騒なんて気にもならない程、 冷静に会話を読み取…

「オバケの代償」1

「オバケの代償」1 人は新しい何かを得ると同時に何かを失うと言う。 其れを代償というのなら、最初から無いものを失ったとは思わない。 本来其所に有るはずのものを無くしたから失ったと思うのだろう。 其れが物でも人でも同じように。 ならば身体を失った…

〈思い出〉3

〈思い出〉3 数日後、そんな状況での運動会当日の朝。 車で小学校のガレージ迄送り届けると、子供は置物のように身動きせず車から降りようとはしない。 学校行事は元々苦手だったので不思議ではなかったが、数日前からの一件も有る。 解らないまま済ませられ…

〈思い出〉2

〈思い出〉2 授業が終わり学校から自宅に帰ると、別室に居た両親は何やらヒソヒソと難しい話しをしている。 この時間の家に父親が居るのは珍しかったので呼び掛けたかったが、 子供ながらに入りづらい雰囲気なのは理解出来た。 いつものように話し掛けられる…

〈思い出〉1

〈思い出〉1 がむしゃらにと決心してはみたが身体が無いという欠点は簡単に補えないのも事実で、 この姿での利点といえば働かないでいいから時間が余っている位だろう。 こんな姿になったからか今までよりも考えてしまうのは、父親の存在意義。 親父とはきち…

〈がむしゃら〉2

〈がむしゃら〉2 「練習しないと乗れるようになれないよ・・・」 もっともな君の正論は相手が大人なら通じるかも知れないが、息子は子供。 「ヘルメット被るのイヤ・・・」とか「暑いからしたくない」という無理やりな理由で一向に乗ろうとはしない。 息子が…

「がむしゃら」1

「がむしゃら」1 もしも自分に子供が出来たら付けたい名前は決まっていた。 蹴人と書いてシュウト。 がむしゃらにサッカーボールを追いかけ走り回る。 そんな子供になってほしい願いを込めていた。 この事からも解るように自分がサッカー好きなのは言うまで…

〈何者?〉2

〈何者?〉2 「別に何も見えないよ~」 怪訝そうに空席を見つめ君は笑って答えるが、もうテレビに集中している息子は聞いてもいない。 確かに子供からの不自然な視線を感じた事は有るが、気のせいだと思っていた。 どんな風に見えているのかは解らないが、ど…

「何者?」1

「何者?」1 生きていた頃は戯れる子供達を抱え上げると、 力持ちなヒーローに例えられたりして気恥ずかしく思っていた。 子供からしたら父親に対しての願望なのかもしれないし、最高の誉め言葉なのだろうが。 自分が子供の頃はヒーロー物なんて興味無かった…

1「寝相と答え」

1「寝相と答え」 愛してるなんて言うような人柄ではない、例え其れが最後の言葉でも。 せめて今までありがとう位は伝えたいが、いざ其の状況になると難しい事の方が多いかもしれない。 実際に自分の時はそうだった。 動かない自分の姿を見た時はさすがにショ…

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