雨実 和兎の小説創作奮闘ブログ

エッセイ・小説・詩・ポエム

転生された場所が魔王城でも俺は生き延びてみせる

78<月明かり>

78<月明かり> 洞穴内に入ると同時に、頭に機械的な声が響く。キラーアントもどきを倒し、LV15に上がりました。予想はしていたが、やはり魔物が隠れていやがったか。こうなると前回の洞穴もウスロスの罠だった可能性が有るが、問い詰めても笑われるだ…

77<無駄足>

77<無駄足> 近くの領主が魔王城を攻める噂を聞いた俺達は、魔王城へと向かい急いでいた。 戦闘狂のガオンや妖しいウスロスが居るのだから、俺が止めなければ皆殺しは確実だろう。 不安は大きいが、思っていたよりもクーガーの移動は速く。 魔王城に着いた…

76<アクビ>

76<アクビ> 買い物を済ませた翌日の朝。 クーガーに小さな貨車を粘糸で繋ぎ、昨日約束した出店に向かう。 あまり重い物はクーガーでは運べないので、馬車に比べると半分以下の量になってしまう。 だが苦労して気に入られたクーガーを、誰かに預けるのは嫌…

75<候補>

75<候補> 毒霧が広場に撒かれた日から二日が経ち、すっかり街は平和を取り戻し。 犯人である、サイコパス野郎も現れてはいない。 ただ少し変わった事と云えば、街の住人を救った噂が広まり。 街の至るところで住人に話し掛けられ、ちょっとした英雄扱いに…

74<後悔>

74<後悔>「いきなり謝るなんて、一体どうしたんだい……? 」ルミニーの質問に応えようとする衛兵は、今にも倒れそうな程に衰弱している。「……お、応援をお願いします。 いっ……何時の間にか縛っていた糸から逃れ、広場が……」其処まで話すと、衛兵は意識を失…

73<謝罪>

73<謝罪> 「……!? ンゴ、ンググググ……」目を覚ましたセトは、粘糸で身動きのとれない状態に困惑している。ンゴンゴと何か文句を言っている様子だが、粘糸で縛ったのは両手と口だから内容は解らない。まあサイコパス野郎と会話をする気も無いから、丁度良…

72<セト討伐戦>

72<セト討伐戦> 「スゴいね~、何ソレ? どういうスキル、変身? 月に代わってお仕置きしちゃうの? 」 俺からも戦闘でスキルを奪える自信が有るのか、セトは瞳を輝かせニヤついている。 確かにトウから聞いたコイツのスキルはチートで、普通に戦えば苦戦…

71<セト討伐作戦>

71<セト討伐作戦> ガルのメンバーに連れられて、エミリとトウが宿屋に帰って来たのは夕方だった。セトという男に襲われた話しをトウから聞いた俺は、怒りに震えていた。ガルのメンバーに助けてもらったのは良かったが、許せないのは其所に居なかった自分と…

70<続セト戦>

70<続セト戦> 「ルミニーさん!!」 ガルのメンバーを見たエミリも、安堵の表情を浮かべている。 「あれま、変な煙りが上がってると思って来たら、アンタ達だったのかい」 セトの動向を警戒しながら、三人は歩み寄る。 「盗賊では無さそうだけど女の子襲う…

69<トウ対セト>

69<トウ対セト> 舞台は異世界に戻り、対面したセトとの戦闘が始まる。 「ホラッホラッ!」 まるで旗揚げゲームのように掛け声を上げ、セトは笑いながらナイフを突き出す。 「避けるの上手いね~。どんどんいくよ~、ホラッホラッ!」 必死でナイフを避ける…

68<死因>

68<死因> この頃医療に興味が在ると言って家族を欺いていたセトは、親に連れ出される事も減り。増えた自由な時間とお金を、実験的な事にあてていた。勿論。其の実験は医療的な意味なんて求めてはいなく、只の虐殺である。つじつまの合う言い訳が、医療だっ…

67<黒原セトという男>

67<黒原セトという男> 時は戻り現代。 父親が教師の家庭に産まれた黒原セトは、周りから普通の子供と認識されていた。 特に勉強やスポーツが出来るでもなく、クラスで目立つでもない。 家庭も特別裕福でも貧乏でもなく、家族仲が悪い訳でもない。 強いて違…

66<天敵>

66<天敵>数日間は食事の準備や資材の管理等を手伝っていたエミリだが、休日を貰えたのでギルドに依頼を探しに来ていた。「薬草採取か、コレなら良いんじゃないか」「うん、頑張ってみる」クーガーに乗り森に着くと、ギルドで貰えた地図を頼りに目的地へと…

65<噂>

65<噂> エミリ達三人が街に来て、数日後。 レンガ運びの仕事が終わると、仕事仲間で一緒に飯を食って酒を呑むのが日課になっていた。 「マオー、お前も随分慣れてきたな」 「いやいや、ソイツはまだまだ新人だ」 宿屋の食堂に大きな笑い声が響く。 相手が…

64<地獄の始まり>

64<地獄の始まり> エミリ達が居る街の近くには王城が在り、其の城壁に囲まれた一角で罪人達を処刑する広場を見下ろす二人が居た。 士官らしき軍服を身に纏った二人は、広場に連れ出された罪人を見下ろしながら会話を始める。 「幾ら人を殺した盗賊とは云え…

63<美味と企み>

63<美味と企み> ギルドを出てガルのメンバーと別れた俺達は、教えてもらった宿屋に向かい町を歩いていた。 通りの店で服を買い着替えたので、もう変に注目される心配もない。 思いの外ミノタウロスの角が高く売れたようなので、其のおかげだったと云える。…

62<ざわめき>

62<ざわめき> 「罪人だから引き摺られてたんじゃね」 ギャハハと背後に響く笑い声も、どうやら再会に浸るルミニー達は気付いていない。 一通り再会の会話が落ち着いた頃、やっとルミニーが本題を切り出す。 「そうだ、登録手続きしてやってよ」 こうしてカ…

61<勝者の勇気>

61<勝者の勇気> 心配したエミリが隣に居てくれた事で、賭けはうやむやになり。 衣服の背中部分が破れて尻が見えそうな事を代償に、完全なる勝利を手に入れた。 隣に居る状態ならエミリにも見えないだろうし、何より勝利者という言葉は気分が良い。 「魔王…

60<チキンレース>

60<チキンレース> 男にはどうしても負けられない戦いが在る、其れが今だ。 そんな大袈裟な決意を胸に抱き、俺はチキンレースに挑む。 会話が聞こえていないエミリは不思議そうな顔をしているが、気にする事はない。 直ぐに隣に行くのだから。 意外と真剣な…

59<バカンス野郎>

59<バカンス野郎> 速ぇ。とにかく速ぇ~。 モフモフどころか、乗り心地すら気にする余裕も無ぇ。 とんでもないじゃじゃ馬だ。 走る二匹のクーガーは、まるで制してみよと云わんばかりの勢いで安全なんて皆無。 近くに集まって居たクーガー達も、とっくに見…

58<クーガーの条件>

58<クーガーの条件> 結局人間では、自分だけがデカイ芋虫を食べる羽目に在った。 砂を混ぜた様な食感と、満足気に微笑むゴブリン。 思い出したくもない。 アイツは悪魔だ。 そんな悪夢の晩餐から一夜明け。 先導するガルの三人に付いて行き、エミリとトウ…

57<おもてなし>

57<おもてなし> 「アイツまた強くなってやがる……」 ルミニーとガオンの戦いを観て、呟くルドエルは悔しそうに唇を噛む。 一緒に死地を戦い続け、同じ剣士だからこそ解る違い。 事実ルミニーはキラーアントの大群を倒した事でLVが上がり、更に強くなって…

56<物好き>

56<物好き> 「獣人のガオンさんとコボルトのネズさん。さっき仲間になったモグラさんと魔王さんです」 ルミニーの質問に笑顔で答えるエミリは、魔王という肩書きが禁句だとは思っていなさそうだ。 意外と天然だったのか? 異世界と云えば魔王が討伐対象な…

55<愉快な仲間達>

55<愉快な仲間達> 俺達、魔王一行が洞穴の外に出ると夜だった。 今更だが、洞穴は元々モグラの魔物が住んでいたらしい。 そんなジャイアントモォールという愉快な仲間が増えたが、他の奴等に比べれば害は無いだろう。 俺を見てもネズの様にヨダレを垂らさ…

54<睡魔>

54<睡魔> 立ち塞がるモグラの魔物と俺は向かい合い、今にも戦闘が始まりそうだ。 自分が戦いたいと云わんばかりにガオンが俺を見てくるが、今回はそうはいかないだろう。 やはり異世界は侮れない。 やっと洞穴から出て、帰って眠れるなんて思っていたのが…

53<ネズの反乱>

53<ネズの反乱> 時は戻り、魔王達が洞穴に入った頃。 使役出来そうな骸骨を探せと指示されたネズは、一人で魔王城近くの骸骨探索をしていた。 「グレン樣たら私を頼りにするなんて、本当に食べちゃいたいですわ」 そんな事を呟きながらヨダレを垂らすネズ…

52<今更>

52<今更> 洞穴の行き止まりで心折れた俺達魔王一行が座り込んでいると、近付く異様な音に反応して各々立ち上がり警戒する。 キラーアントと対戦していた時には無かった現象から予想すると、新しい敵の可能性が高い。 そんな事を考えていると大きな音と同時…

51<呼び掛け>

51<呼び掛け> 目が覚めたら洞穴の中だった。 だが山の様に在った蟻の遺体が無いし、洞穴内も少し景色が違う。 確かエミリを庇って、胸を貫かれたから死んだと思ったが。 もう紅い蟻が居ないのはガオンが倒して、魔法とか回復薬で俺を助けて移動したという…

50<未熟者>

50<未熟者> 「こんな事になるなら、来る前にたらふく肉食いたかったぜ」 「喋ってる余裕有るなら、もっと身体動かしな」 戦いながらルドエルは軽口を叩くが、ルミニーの言う様な余裕は無く。 飛び交うキラーアントから、互いに庇い合う戦闘にも限界が来て…

49<鼓舞>

49<鼓舞> 「だから借りても嫌だって言ったのに……」 ぼやきながらも闘技場に駆け寄るルドエルの尻を叩き、ルミニーは笑いながら鼓舞する。 「そんな冗談言ってる場合じゃないよ」 ガルの三人はルミニーとルドエル前衛二人、リジョン後衛一人に並び。 「リジ…

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