20<悪巧みと契約成立>
<悪巧みと契約成立>
あのククク野郎が付いて来た時に悪い予感はしたが、やはり悪巧みしていやがった。
モノマネした時の仕返しなのか、只の嫌がらせを楽しんでいるのか本当に信用ならない。
だが今は取り敢えず彼女を助けに行かないと、又ククク野郎が何するか解らない。
鍵は開いていたので難なく室内には入れたが、中では黒いローブを纏った誰かが倒れている。
慌てて駆け寄り起こそうと抱き抱えると、其れは骸骨だった。
驚いたと同時に、不気味な違和感を感じる。
朽ちているなら、普通は崩れ落ちていくはずだが。
まるで生きているかの様に骸骨は全体の形を保っていて、今にも動きだしそうだ。
そう思っていると頭に機械的な声が響く。
魔王:グレン・ルーファス
[擬態姿真似]の条件が整いました。
やはりオカシイとは思ったが、魔物の遺体だったのか。
だが一つ解ったぞ、どうやら戦わないと能力擬態は出来ないらしい。
だが気のせいか?今、魔王って聞こえた気がしたが。
「人間が二回も来るとは珍しい日だな」
不意に喋りだした骸骨に驚き手を放しかけると、骸骨は何事も無かったかの様に話し掛け続ける。
「そう怖れるな、もう我は消える身だ。其れよりも頼みが在る引き受けてくれんか?」
骸骨兵の親玉らしき恐ろしい見た目とは裏腹に、威圧感の在る話し方ではなく。
少し安心はしたが、恐る恐る訊ねてみる。
「頼みとは、どんな内容でしょうか」
「我が消えて配下が哀しまぬよう我の代わりに主になってほしい、お前のスキルなら其れが可能だろう」
どうやら俺のスキルは見抜かれているので、理由を付けて断りづらい。
其れに主って、やはり魔王というのは聞き間違えではなかったのか。
特にメリットが無いので悩んでいると、魔王は話しを続ける。
「勿論タダとは云わん、我の知識を全て授けよう。其れに我が転移した城もお前の物だ、どうだ悪くはないだろう」
確かに条件は悪くない。
外は荒野で、きっと魔物が沢山居るだろうし。
人間の済んでいる所迄行けるかは解らない。
くれるという城も全体的に薄暗くはあるが、かなり広く豪華。
此の部屋は所々に戦闘跡のような傷が付いていて、寂しげに大きな椅子が一つ有るだけだが物件としては悪くない。
配下を騙すのはどうかと思うが、気にしなければタダで寝る場所を得たようなものだし。
上手く誤魔化せれば、彼女を救うリスクもゼロになる。
「喜んで引き受けましょう」
「契約成立だな」
そう云うと魔王は砂の様に崩れ落ち、ローブだけを残して消えていった。
早速ローブを纏い[擬態姿真似]で魔王:グレン・ルーファスを選択。
見た目が骸骨になってしまったので、恐れられるかもしれないのは残念だが仕方ない。
此れで彼女が救えるなら、其れだけで充分だ。
そう思ったのも束の間。
「そろそろ我の配下が来るぞ」と先程消えたはずの魔王の声が、直接頭に聞こえてくる。
どういう事だ、消える身じゃねーのかよ。
口に出していない俺の疑問に、魔王が意識内で答える。
「喜べ。お前の魂に取り付いて、我の知識を授けているのだよ。このまま消えてしまいたかったが、まあ人間の寿命なぞ短いからな仲良くしようじゃないか」
取り付くって?最初の説明で聞いてねーよ。
しかも寿命分って、仲良くしようじゃねーよ。
こんなん呪いじゃねーか。