雨実 和兎の小説創作奮闘ブログ

エッセイ・小説・詩・ポエム

転生された場所が魔王城でも俺は生き延びてみせる

48<貸し一>

48<貸し一> 「少し狭いけど、まるで闘技場みたいですね」 調査隊が最後に着いたのが、あの円形闘技場だった。 見渡すリジョンの言葉に、一行は頷く。 「こんな所で、目一杯魔物と戦ってみたいもんだね」 そう言って闘技場に立つルミニーは、踊る様にステッ…

47<リサイタル>

47<リサイタル> 「こんなに広いのに、めぼしい物が全然無いですね……」 「見付ければラッキー位だから仕方ないよ……」 殆んどの部屋を周り、収穫無しで疲れ切ったリジョンとルドエルの顔には諦めが漂う。 「まあハズレ引いたけど、報酬は貰えるんだし良いん…

46<思惑>

46<思惑> 前回ルミニー達が魔王城に来た時は霧で隠された様に感じたのが不気味だったが、まるで誘い込まれた様な今回は更に異質な不気味さを放っていた。 ルミニーが言っていた其れを感じ取ったガルのメンバーは、同様に口をつぐむ。 調査内容として魔王城…

45<招待>

45<招待> 一方、時は戻り。 魔王が紅い蟻に胸元を貫かれ殺された頃。 転移魔法で洞穴の入り口に戻ったウスロスは、魔王城に向かい歩き始める。 どうやらウスロスの目的は果たしたらしく、笑い声の鼻唄は高らかに響いている。 洞穴内での道順をコントロール…

44<目覚め>

44<目覚め> ダンジョン攻略を諦めたからと云っても、出口にワープ出来る様なアイテムは持っていない。 魔王が起きていれば魔法で可能かもしれないが、ガオンに担がれたまま起きる気配は無く。 現時点では自分達で出口を探すしか、脱出する方法は無かった。…

43<手本>

43<手本> しかし良く見ると、倒れている男の顔には見覚えが在る。 本来骸骨である魔王の顔なんて解らないはずだが、思い返していると思い出した。 魔王城の牢屋に居て、一緒に逃げようとしていた男だ。 娘のエミリも気付いた様で驚いた表情をしていたが、…

42<理解>

42<理解> 何が起きたのか理解が追い付かない。 紅い蟻が娘のエミリを攻撃しようとしたのを、魔王が前に立ち助けようとしたのか。 紅い蟻も魔物だからAランク以下ならエミリに触れる事は出来ないはずだが、知らない魔王にとっては守るべき配下なのか。 そ…

41<一対一>

41<一対一> 大量の栄養を得て進化した紅いキラーアントは、通常のキラーアントよりも大きく。 もうキラーアントとは別の種族だと云える、だが番いが存在しないのだから種族の繁栄は無く。 他の生物にとっては殺戮しか生まない、災害の発生だと云えるだろう…

40<魔笛>

40<魔笛> 只の洞穴とは知らず、ダンジョンだと騙されたまま魔王一行は進み続けていた。 少ない敵とは戦わないという、宣言以降の気楽さは口笛ものだ。 勿論魔王という立場が在るし、暗闇で口笛を吹くのは不吉だから実際に吹く事は出来ないが。 多少のキラ…

39<狂想曲>

39<狂想曲> 魔王一行がダンジョン探索を続けていた頃、洞穴の入口では魔王城を守っているはずのウスロスが妖しく笑い内部に入って行く。 すでに下見を終えているのかウスロスの歩調に迷いは無く、微かに響く笑い声は鼻唄混じりである。 そのまま幾つかの別…

38<宣言>

38<宣言> ガオンが寝たのは諦めよう、流石に魔物が来たら起きるだろう。 其れよりも今、気掛かりなのはゴブリンの挙動不審だ。 骸骨兵の帰りを待つ間に気付いたが、魔物を警戒しているのか辺りを何度も見回している。 其れだけならゴブリン自体が弱いから…

37<完璧な布陣>

37<完璧な布陣> 朝から寝室のドアをノックする音が響く。 偽者とはいえ、わざわざ魔王を起こしに来るとは勇気の在る奴だ。 ドアを開けると、ウスロスが白々しく頭を下げる。 「参謀として重要な報告が在るのですが宜しいでしょうか」 もう相手がコイツとい…

36<悪巧み>

36<悪巧み> 時は現在に戻り。 ケルマンとルミニーが一時休戦となり、近付く魔物に備えガルのメンバーは書記官のラタを守る為に輪に並ぶ。 索敵報告をしたリジョンの慌てた様子から察すると、魔物が少数の可能性は低い。 そんな一行の予想通り現れた蟻の魔…

35<二人の知らない事>

35<二人の知らない事> 町の人に連れられ、孤児院である教会に預けられたルミニー。 まだ預けられたばかりの頃は笑顔も無く、部屋の隅に一人で居る事が多かった。 そんな両親を亡くし落ち込んでいた気持ちを和らげてくれたのは、同じように両親を亡くした同…

34<代償>

34<代償> 幼少期のルミニーは活発では在ったが決して攻撃的な人間ではなかった。 町外れの森近くに住んでいたその頃。 父親の職業は木こりで、母親と家で父親の帰りを待つ一般的な家庭であり。 森に詳しい父から生活費に為る薬草や、危険な魔物の種類を教…

33<冒険者と貴族>

33<冒険者と貴族> 翌日の朝。 ご機嫌なルミニーとは違い、リジョンとルドエルの二人は不満そうな溜め息を吐いていた。 「・・・・・・戻って直ぐは流石に憂鬱だな」 「良いんじゃない、行くだけで報酬貰えるんだから」 ルドエルが溢す愚痴を、ルミニーは笑…

32<ギャンブルの結果>

32<ギャンブルの結果> 所変わり。 ルミニーとルドエルとリジョンの三人は、魔王を倒した事を先に伝書で送り。 一行は街に戻って来たのだが、街道に迎える人も無く凱旋という雰囲気ではなかった。 「先に武器屋行って、このデーモンバスターが幾らになるか…

31<魔王の狩り>

31<魔王の狩り> 「実際料理なんて出来るのか?」 自分の記憶ではエミリが料理しているのは、そんなに見た事が無い。 其れに食料を魔王が調達すると云っているのだから、とんでもなくデカイ魔物を渡される可能性も在る。 「簡単なので良いなら大丈夫かも・…

30<親バカ>

<親バカ> エミリが髪を整え終えようとする頃、寝室のドアをノックする音が響く。 ドアを開けると疲れきった顔のゴブリンが立っていて。 云われるがまま俺達は魔王の居る部屋に向う。 ずっと働いていたのか今にも死にそうな表情のゴブリンを見ると、自分の…

29<春と修羅>

<春と修羅> 時は少し戻り。 魔王曰く空いている部屋を使って良いと言っていたので、トウとエミリの二人は魔王城内を歩き寝室を探す。 ついでに消えた少年を探してみたが、当然見付ける事は出来なかった。 まさか其の少年が、さっき迄会っていた魔王だとは…

28<甲斐性無し>

<甲斐性無し> 「其れでは各自早速取り掛かってくれ。我は出掛けてくる」 「お供致しますわ、私はグレン樣の秘書ですので」 まるで散歩に行きたがる犬のように、ネズは尻尾を振っている。 「構わん、我は一人で行く」 此処は強く云っておかないと、付いて来…

27<メインクエスト>

<メインクエスト> 配下が邪魔者ばかりだという事は解った。 だがコイツらに此れ以上、自由に動き回られると俺の自由が奪われてしまう。 俺のメインクエストを叶える為にも、どうにかしなければ。 少し考え、俺はゴブリンに指示を出す。 「配下を全員集めて…

26<魔王の一歩>

<魔王の一歩> 寝室に移動した俺は、一息ついて寝室内を眺める。 室内には天幕の付いた豪勢なベッドと、机と椅子が綺麗に並んでいた。 異世界に来てからのゴタゴタ続きで疲れていたから、ベッドで寝れるのは素直に嬉しい。 だが、寝る前に確認しておかなけ…

25<なんちゃって魔王>

<なんちゃって魔王> ものすごい勢いの足音が近付いて来ている、もう逃げる事も出来なくなってしまった。 「まあ、お前は玉座にでも座っていろ。オロオロしていると疑われるぞ」 落ち込む俺を意識内の元魔王がたしなめる。 どんな状態なんだコレは、授業参…

24<運命の別れ道>

<運命の別れ道> この距離で今更逃げる事が出来る訳なんてなく、三人は覚悟を決めるしかなかった。 残り魔力の少ないリジョンは、支援魔法でルミニーとルドエルを強化。 再び身構え魔王グレンと向き合うが、魔力を開放していない状態でも魔王の威圧感は凄ま…

23<期待値>

<期待値> 門番の骸骨兵四体に気付かれないように、城近くの死角に移動したガルのメンバー三人。 ルミニーの合図でリジョンは岩石魔法を上空から城に複数投下、其れに拠り空いた壁の穴から三人は侵入。 リジョンの岩石魔法に依り城は何処崩壊していて、骸骨…

22<オールイン>

<オールイン> ガルのメンバー三人に気付く事なく、骸骨兵達は魔王城に入って行った。 門番には骸骨兵四体だけだが、城内には何体居るか見当も付かない。 静かに圧倒的な存在感を放つ魔王城を眺め、ガルのメンバー三人は困惑していた。 骸骨兵を統率する存…

21<ハズレくじ>

<ハズレくじ> 時は戻り、ガルのメンバー三人は沼地で合流していた。 「まだまだだね六体取りこぼしちゃったよ」 24体も骸骨兵を倒したのにルミニーは不満そうに呟く。 「二人はどこに行ったんだい」 ルミニーは不思議そうに訊ね、辺りを見回す。 「六体…

20<悪巧みと契約成立>

<悪巧みと契約成立> あのククク野郎が付いて来た時に悪い予感はしたが、やはり悪巧みしていやがった。 モノマネした時の仕返しなのか、只の嫌がらせを楽しんでいるのか本当に信用ならない。 だが今は取り敢えず彼女を助けに行かないと、又ククク野郎が何す…

19<希望と予想>

<希望と予想> 人との戦争でも起きたのか、もう何が起きているのか解らない。 それぞれ暴れ始める魔物達は逃げる事を優先しているのか、俺達を狙わず分散している。 其れでもミノタウロスだけは変わらず彼女に殴り掛かるが、やはり薄い光りに阻まれミノタウ…

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